校長講話

終業式に 「始めに言葉があった」         2019年3月19日

今日は、4年生も出席してくれています。皆さんはどんな思いでこの日を迎えたでしょうか。
私は学習旅行のあとインフルエンザで40度も熱が出て金曜日まで休んでおりました。その間、教頭先生を始め多くの先生方が補って仕事をしていただいており、「チームってありがたいなって」しみじみ感じました。
こうして、皆さんの前で話ができること、これも決して当たり前ではなく奇跡に近いことに気づくのです。不登校で学校にくるのが苦手だった人がいます。けれど、今は、普通に登校できるようになりました。彼女もまた、先生や仲間の支えがあったけれど自分で困難を乗り越えました。そして自分の意思で居場所を作りました。
皆さんもまた、こうして1年間を過ごすことができた。皆さんの家族はもちろん、私たちの1年を支えていただいた多くの方々、仲間に感謝したいと思います。

さて、丁度3月11日以降、東日本大震災から8年目の報道と重なり、じっと寝ていると思いがわいていきます。「今日は、始めに言葉があった」というお話をします。

少し楽になってTVでドキュメンタリーを見ました。
「“震災タイムカプセル” 拝啓二十歳の自分へ」
津波で大きな被害があった岩手県山田町で、当時12歳だった6年生。震災直後に埋めたタイムカプセルを、成人式を迎えた20歳の仲間たちで掘り起こします。そうして当時、卒業したばかりの自分から「二十歳の自分へ」と書かれた手紙を担任の先生からうけとり、みんなで読み合っていました。
当時から8年後を予測して記録がとられていること自体がすごいなって思います。

自分が書いた手紙を恐る恐る開ける20歳の青年たちがそこにいました。
被災した地元で「復興の役に立ちたい」とダイバーや自衛官・警察官などに就職している人もいます。その一方で、「進路をどうしていこうか」と迷っている人もいました。
その迷いを「12歳の自分からの言葉」が方向付けていくのです。

英語が得意だったAさん。専門学校からあこがれのキャビンアテンダントとして東京で働きます。
けれど、「早く・早く、次・次と追われる日々のくらし。一人ひとりが大切なお客様なのに、時間に追われる仕事。」「何か違う」と、スッチーやめて岩手へ帰ってきたところでした。
そんな彼女の12歳の言葉は「夢をあきらめないで」・・・その言葉は、彼女の眠っていた夢・・・海外で働きたいという夢を「もう一回やってみようよ」と思い出させてくれたのです。
若松英輔さんという作家が「今、生きているこの瞬間(とき)は、二度と戻ってくることがないことを知りながら、それを十分に愛(いと)しむことができないでいる。」と指摘しています。
Aさんもまた、そんな自分に立ち止まったのです。

Bさんは、看護師志望。いろんな症例に出会える大都会の病院にあこがれていました。ところが、
12歳の自分の言葉は「お母さんを支えていってください」でした。どちらにしようか悩み抜いた末、その自分の手紙の言葉に導かれ、地域医療のできる診療所で働くことを決意します。都会でないとできないことはない。ここで働きながら苦労をかけたお母さんを支えたいと一歩を踏み出すのです。

残った手紙も担任の先生が届けます。都会の大学に出たまんまで「ちっとも帰ってこないじゃないの」っていわれながら自分の手紙を読むCさん。12歳の自分からは「山田町に役に立つ人に」とありました。彼は、ロボット工学を専攻していました。「津波が来たときに人じゃ危険だから、そんなときに動けるロボットをつくりたいんだ」と夢を語ります。
「帰ってこなくても、地域に役にたつ仕事めざしているのね。がんばってね」と先生に励まされてはにかんでいる20歳の若者の姿がありました。
このクラスの目標は、「Never Give up! Do your Best!」
この言葉もきっと子どもたちの潜在意識に働きかけ続けてきたのでしょう。

皆さんも進路を考えています。この町で働こうと思っている人、この町を出ようと考えている人それぞれですが、家族のこと、そして、「この町の将来」もまた、あなたの人生のどこかにいれておいてほしいなって願います。

こんなふうにして、言葉は、私たちの人生の道しるべとなることを彼らから教わります。
私たちが使う言葉は、人を傷つけたり、苦しめたり、死に追いやったりすることもあります。
先週も17歳の高校生がいじめで自死においやられています。
けれども、言葉は、人が本来が持っている生きる力へ働きかけ、それをよみがえらせるものでもあるのです。

私も、高校時代にラジオで流れていた「暗いと不平を言うよりは進んで灯りを灯しましょう」
「夢は願えば叶う」という言霊に導かれて、困難を乗り越えることができましたし、いろんな人とのつながりでここまでくることができました。

みなさんも小学校の卒業文集にきっと「将来の夢」を書いていると思います。
その夢が今はどうなっているでしょうか。家へ帰ってもう一度、12歳の自分と向き合ってみてほしいと思います。また、1年生入学の時に綴った「私の思い」何を書いたか覚えていますか?
みなさん一人ひとりの「思い」ですが、「思いの通り」にいっていますか?
学年の始めに書いた目標「言葉」を覚えていますか。
聖書にあるように「はじめに言葉ありき」なのです。「はじめに言葉があった。言葉は神と共にあり、言葉は神であった。」のです。だから言葉が人生を導く力をもっていると確信するのです。

みなさんの言葉もまた、先程の「20歳の自分へ」と同じようにみなさんの人生を導いていきます。年度の初めの言葉がその1年を方向付けます。卒業した3年生の中には、自分の立てた目標「言葉」どおり3月までがっぷり入試と向き合った生徒もいます。
今日いただく通知表もみなさんの一つの足跡。けれど、通知表に表れない自分の内面の成長もしっかり見てあげてください。
自分の言葉に導かれた、一人ひとりのかけがえのない1日1日の積み重ねの結果が、年度の終わりを、今のあなたを決定しているのです。良かったなら良かった言葉があった。あまり良くなかったとしたら、言葉が弱かったのかもしれませんね。

自分の中にあるかすかな「思い・願い」を「言葉」とすることで確かなものになります。
その言葉を外に発するとき「祈り」になります。回りに影響を与えます。自分の中でも覚悟が出来ます。そうして、言葉があなたの未来へと導いてくれるのです。一歩踏み出す春休みです。

最後になりましたが4年生の皆さん、
実習を終えて自信がつきましたね。これまで以上により深い洞察力と主体性を磨いていってください。迷ったら、自分は何のためにここに来たのか「初めの思い」に立ち返るのです。
卒業した5年生が言っていましたね。「同じ目標をもつ仲間がいたからがんばれた」って。
「人の役に立ちたい」それは真実。でももう一歩踏み込んで強いものにしてほしい。
これも、見ていたTVの焼き鳥屋さんが師匠から教わったという台詞ですが
「他人のためなら手をぬける。己ばかりは裏切れない。自身のためにひたすら真面目たれ」と
ボランティアって自分のためにやっているでいいのだと思います。
自分の中に根拠をもつことの大切さを思い知りました。

私たちも皆さんに習って、自分の中に仕事に向かう根拠と謙虚さをもって、1日1日を愛(いと)おしめる教師として成長していきたいと思います。また、「チーム日星」として共に切磋琢磨し合う仲間として、皆さんと共に歩んでいける教師集団でありたいと思っています。
皆さん、4月には新しい希望をもって再会しましょう。