看護科5年課程の2年生が、もうすぐ、実習認定式を迎える。臨地実習に行く資格を認定するセレモニーなのだが、1ヶ月かけて準備をしていく。心を作っていく。入学してから1年半が立って改めて自分の看護師になろうという志を確認する日でもある。

それに向けた導入として、私が1時間授業することになっている。毎年のことではあるが、生徒たちは毎年違いそれぞれの色がある。担任の先生の協力を得て、生徒たちの課題や表情をリサーチし、題材を考える。40名の生徒の中には、「果たしてこの道でよかったんだろうか」と立ち止っている生徒もいる。思っていた以上に勉強が難しかったり、課題が多くて追いつかなかったり、そういった問題にぶつかると「そもそも」論に立ち返ってしまうことが多い。

例年は、ヘルスプロモーションの自助共助公助の話をし、看護の坂道を登っていくために「自分の力をつけること」「助け合うこと」「環境を整えること」の大切さを見つけてもらっていたが、「今年は何を話そうか」とずっと考えていた。

テーマは、勇気づけだ。上から目線でできていないことを指摘しても受け入れない。コップが上を向いていない時には、水は入らない。ならば、まずコップを上に向けること。そうすれば、生徒たちは、自ずと学んでいってくれる。教師だから、校長らしくと頑張ると上から目線で口で言ってしまう。そういう傾向の自分にとっては珍しい立ち返り。生徒達の今に寄り添う・・・それだけで良いのではないか。すると今年のタイトルは「立ち止っているあなたへ」だ!

そんなことを考えながら出張帰りに京都駅の書店に立ち寄ると『病院というへんてこりんあ場所で学んだこと』という本が目に入ってきた。書いた人は「26歳看護師×イラストレーター」。イラスト描くのが大好きな看護師さんが、看護師になりたての頃からの今の心の動きを綴った素敵な本である。帰りの電車の中で一気に読み終えた。

看護師仲本さんが、患者さんと向き合い、何もできない自分の未熟さを知り、無力感に苛まれながらも、仲間に支えられながら前に進もうとする。その姿がイラストで表現され、読みながら涙が出た。共感の力だ!・・・このことを今年の生徒たちに伝えたいと思った。

悩んでいるのは自分だけではない。自分が何ができるだろうかと思い煩う前に「腕を磨くしかない。」と教えられる。仲本さんの前向きな姿から、生徒たち自身が学んでくれればいいと思う。ページをPDFにしてKeynoteに貼り付け文字を大きく見えるようにし、立ち止って考える問いを入れた。65枚のスライド これを30分でやる。

まず、「自分が看護師になろうとしたわけを思い出してみよう」そしてお隣さんとシェアをした。・家族が入院した時に励ましてくれた看護師さんに憧れた。家族が看護師なのでその姿を見て自分もやろうと思った。そうした動機を語ってくれる。

新任看護師久本さんのお話・・・未告知で終末期のおばあちゃんに「私、ガンなのって」問われる。第2問は、「みんなだったらどう答える」

家族から告知をしないでいることを言われていたため、生徒たちは「なんとなくごまかす」とか「違う話にもっていく」などと答える。

ネタバレになるのでこれ以上は本を読んでいただきたいと思う。仲本さんは「どうしてそう思われるんですか?」と彼女に返していた。答えは患者さんの中にある。

はじめは、硬い表情だった生徒たちは、仲本さんの心の動きにシンクロしてくれた。見ていた担任の垣田先生が「だんだん、前のめりになって行きましたね」って言ってくれた。最後には自分への励ましを書いて終わった。

自分の振り返りとして書いてくれた感想をそっと読むのが怖いし楽しみもである。こうした機会をいただき(私の授業はこれだけだけど)一生懸命に考え、投げかけたボールをちゃんと受け取ってもらうと嬉しい。私自身の「お役立ち感」から「自己肯定感」が上がる。

学校という場所には、様々な課題を抱え悩みながら前に行こうとしている生徒たちがいる。そうした生徒と向きあい、自分にできることを精一杯やっていく。私自身も生徒たちや先生から力をいただく時間である。