朝日新聞デジタルより

「コロナ以前の社会」に恋しくも後戻りをしないために 

 アーティスト・カヒミ カリィ

実際に今回、外出自粛のおかげで、普段は隠れている動物たちが街に姿を現しているという話や、破壊されたオゾン層がどんどん回復しているというニュースがありました。環境問題は深刻すぎて手遅れなのではないかと絶望的に思っていましたが、本気になれば改善は可能なのだと分かり、希望を持ちました。

今、深刻な状況のNYにいることで実感しているのは、私たち一人一人が責任ある行動をすることで、世界の流れが確実に変わるということです。今の私たちが学ぶべきことはなんだろうかということを、毎日何をしていても、ずっと考えています。

今回の問題の原因にはさまざまな説がありますが、どちらにしろ、私たち人間の自己中心的で行き過ぎた行動の結果なのではないでしょうか。各国のニュースを読んでいると、感染拡大を戦時中と例えられることが多いように思いますが、この過酷な状況や閉鎖的な環境は戦時中に似ているとしても、敵はウイルスそのものではなくて、人間自身なのではないでしょうか。

この矛盾を真摯(しんし)に受け止めなければ、これからも繰り返してしまうのではないかと、特に子どもたちの未来を思うと本当に胸が詰まります。今は、私たちの人間性が試されているように感じるのです。

先日、イギリスの霊長類学者のジェーン・グドール氏がインタビューで言っていたことがとても胸に残っています。

「日々の小さな選択をするときに、その選択がもたらす結果を考えるようにすれば、誰でも毎日、影響を与えることが出来る。何を食べるか、その食べ物はどこから来たのか、その食べ物は動物を虐待してえられたものか、集約農業によって作られたものか、子どもの奴隷労働で作られたから安いのか、生産過程において環境に悪影響を及ぼしたか、どこから何マイル移動してきたのか、車ではなく徒歩で移動出来ないか。私たちが生活の中で出来ることは、一人一人少しずつ異なるが、私たち皆が変化を起こすことが出来る。誰もがだ」

この問題が収束した後、私たちは恋しくとも後戻りをせず、勇気を持って大きく舵(かじ)を切り、良い世界へと方向を変えて進むべきなのだと、そう強く思っています。

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